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ビリギャル

ドラえもんに出て来る、のび太くん。

学校のテストで、本当に0点ばかりとる、のび太くん。

そんな事って大袈裟だーと思ってたけれど、うちのVItamin Eは正しくそんな感じだった。本人も、ドラえもんを見ながら、「のび太くんは私みたいだねー」と、呑気に言っている。

 

本当に全く意味がわからないらしい。紙上のものを覚えると言うことが、そしてそれを再現する(また書き出す)と言うことが、全く年相応のことが出来ない。

 

ずーっとその調子だった、その彼女がこの数週間で、何かが変わり始めた。小学校2年の頃の算数ドリルを、引っ張り出してやり始めたのをきっかけに、今度は英語のリーディングの本へと進み、一冊(6年生用)をあっという間に終えようとしている。そして次の本をオーダーしてと頼んできたので、7−8年生の英文問題集をアマゾンで買った。歴史物に興味があるらしいので、そう言う内容が、載っている本を選んだわけだが、届くとすぐに早速ページをめくり読み始めた。歴史が好きな理由はドラえもんのタイムマシーンのおかげでもあるが、計算は不得意なのに数字を覚えるのが得意。いつの時代?と、自分のことや、自分のおじいさん、ひいお爺さんと比べて、楽しんでいる。

特に友達や有名人の誕生日などは、すぐ覚える。この間は私の誕生日がトランプと同じだと、みんなにバラした。

 

半年も学校に行っていないうちに先週水曜日から学校が始まった。

コロナが続いているから、学校もオンラインのみ。

 

周りの子供たちは宿題が多くて大変だと嘆いているらしい。Vitamin Eも、それに憧れて、期待していたみたい。残念ながら彼女の期待は裏切られ、スペシャルエドは、提出しなくてはならい宿題がほとんど無い。個人差が大きいクラスなので、個別でレベルに合わせた宿題が出る。締め切りのない宿題。先生は「やる気スイッチ」の見えない子たちに、探りを入れる様に宿題を出す。簡単すぎる宿題もあれば、難しすぎる宿題もある。「出来たら出してください」と言う感じの宿題。それは今までの彼女だったら、オールスルーだったのが、全部やって、出したいと言う。そしてさっきプリント3枚を先生に送っていた。さすが、マイペース、急いでやろうとは微塵にも思っていない。

 

学年相応の読み書きが難しいとは言え、Zoom は自分でコネクトできるし、その後Google Class Roomから宿題を引っ張り出して、タイプして、先生にメールで提出できる。小学校低学年のお父さん、お母さんはそう言うわけにはいかない。コロナ中だと子供の学校に付きっきりになるので、在楽勤務の人も、全く仕事にならないらしい。大きくなってくれていて、よかった。

 

親として、とても嬉しいのが、子供が自主性を持って行動するところを見られること。コロナ中、とにかく何も言わないで彼女達の、したいことだけをさせてみた。部屋は荒れまくり、キッチンもいつも皿と鍋がごった返し。洗濯物もあらゆるところに点在し、ゴミと、大事なものの区別が全く見えない。何も言わないで、、、とは言ったものの、実は毎日私は独り言の様にブツブツ文句を言いながら、後始末をしていた。

 

そこで事件。大家さんから禁止されているので、うちでは動物を飼っていないのだが、なぜかノミが出たのだ。子供の頃猫を買っていて、どの猫にノミがついた時のことを覚えているので、焦げ茶色でちょっとキラッとした、小さな粒が飛んだのをみた時に、確信した。きっとキャンプでもらってきてしまったのか、遊びに行った先で貰ってきたのか、ある日を境になぜか刺されて痒くてたまらない。いいきっかけだったから、とにかく子供部屋を全部片付けさせて、カーペットクリーナーをばら撒いて様子を見た。1日経って改善が見られないから、今度は煙の出る薬を買ってみた。周りの人は「暑くなると発生するよ」と言う。この頃、確かに異様な暑さだった。おかげで子供部屋の床を久々に見た。

 

片付けをしたおかげで、

『ビリギャル』

https://us04web.zoom.us/j/6413667161?pwd=dVJTM2lPempMYkNxR1N3dWVqRFArZz09

言うタイトルの映画を、見つけた。レンタルビデオ屋さんが引越しセールを数年前にした時、たまたま入手した東宝映画。内容は高校2年生の夏まで偏差値30だった女の子が、もう勉強して現役で偏差値70の慶應に合格する話。雑誌のインタビュー記事でたまたま読んだことがあった話だったので、興味津々で見た。

 

ストーリー

小さな頃から自分の世界に浸ってしまう子だった主人公。制服がかわいいなーと言うところからエスカレート式の学校に小学校4年生から入って、その後は全く勉強をしたことがなかった。学校を停学になってそのまま夏休みになったのがきっかけで、行き始めた塾の先生が、なんと「褒め上手」。その先生の言葉のマジックにかかり、彼女はメキメキと目標を持ってやり始める。いろんな困難はもちろんあるが、それにも負けずにひたすら勉強、遊び仲間も応援してくれて、夜遊びも卒業。ついの果てには慶應大学に合格してしまう。

 

この映画を初めて見たのが4−5年前だった。こんな奇跡が起こってくれたらどんなにいいかと思いながら。そして二日前、Vitamin Eがまた見たいと言うのをきっかけに一緒に見た。まだまだ小さな子供だと思っていたのに、内容半分覚えていたらしく、私みたいな子が出ていた映画、、、と言う。

 

やる気スイッチがどこにあるのか、、、それを見つけるのが人生だと思うが、その存在すらわからない、その経験すらしたことがない子には、とにかくやる気スイッチを親や、周りの大人達が探すしかないのだろう。最近ではその役割をSNSがやってくれる。TicTok先生や、Instagram,YouTube 先生にお世話になりっぱなしだから、今日も新しい情報と言いながら、抹茶の粉と蜂蜜でフェイスパックを作って塗ったままテレビを見ていた。贅沢すぎる〜。Valuble と言う言葉の意味を教えたばかり、、、。「綺麗になりたいスイッチ」はいつもオンだ。

 

そして『ビリギャル』を見た後の彼女は、「ひょっとしたら高校生になったら普通学級に入れるようになるかもしれない」と言う希望を持ち始めた。映画の中の女の子は、たった一年半で7−8年分の勉強をしたことになるのだから。

その映画を見てからは、算数に関しても自分のレベルを知りたいと思っているらしい。算数のドリルも買って欲しいと言う。

Vitamin Eも遂に目覚めたか。学年レベルの授業を受けたいと言う執念。みんなが知っていることを知りたいと言う知識欲。

 

ドリルをやり始めた時には、正直びっくりした。読むスピードは、もちろん普通の子に比べたらまだまだ遅い。でも内容を理解し、わからない言葉をすぐに見つけて聞いたり、調べたりしている。ネットばかりやっていたけれど、検索能力、タイピングは夏休み前と比べてまるで別人のよう。

今日読んでいる内容は、「初めてカメラを作った人の話」なのだと嬉しそうに説明したりする。

 

高校生で普通クラスに行けるか行けないかは別として、彼女のやる気をキープするために、その夢(モチベーション)はできるだけ壊さないようにしよう。

来年の5月に3年に一度のミーテイングがあるからそれまで、できるだけのことをやるようにと言ってある。本当、実の所は、親の一存で決まる。カリフォルニアのIndependent Education Program(IEP)に入れる資格は、3年以上進んでいるか、3年以上遅れているかと言う審査で資格がもらえる。どこの学校に転向しても、この資格は3年ごとの審査で判定が付く限りもれなく付いてくる。将来ずっとここにいることを希望すれば、高校卒業後の4年間の職業訓練校も付いてくる。ちょっとしばらく彼女の知識欲を観察してみよう。IEPは抜けても3年はそのキャリアが継続されていると言うことだから、実質来年の5月に高校3年間のプログラムがほぼ決まってしまうと言うことになる。

 

何が嬉しいかと言うと、リーディングをしている時の彼女の誇らしげな笑顔。今まで意味解読不明だったものが、急に分かり始めた喜びの笑顔。その笑顔を見ると、彼女も幸せに生きることを見つけるだろうと少し安心する。受け身より、行動する方が、何倍も楽しいはず。