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伝え方が9割

口下手、、、がまかり通っていた子供時代。「お母さん」って話かけても、「えっとー、それでーの後が全く出てこない。「それでなに?」と言われて「あー、、、」と焦れば焦るほど出てこない。

どんなに頑張って話しても、中々相手に伝わらない。

幼稚園の時、「あなたの名前は?」と聞かれてちゃんと言ったつもりだったけど、「え?こリスちゃん?」と同学年の子にからかわれるくらい、もじもじして、覇気のない子だったと思う。

 

小学生に上がって直ぐ、ある先生の一言で私は人と話すことができる様になったわけだけれど、その後はただ思ったことをストレートに言うことしか出来ない、怖い子供に変身したと思う。ある時は先生の下手、ある時はガキ大将。それは小学校の高学年で友達から今で言う『いじめ』のような事が起こるまで続いたと思う。自分の事を良く思っていないだろうと言うことを感じても、気がつかないふりをして無視していた。そんなある日、当時の担任の先生が、ボソっと私がみんなから煙たがれる理由を指摘してくれたので、それからは発言に気をつける様になった。数週間後なぜか私に意地悪をしてたと思っていた人達の方がから、謝罪が入った。私が彼らを無視していたのがそんなに怖かった?!のか?私の方が怖かったと思うのに。

 

そして中学生になったら、また違うタイプの『いじめ』問題。こちらは主導核の子が、交代でターゲットを決めて行う『いじめ』。これもまた交代で、、、。その時主導権を握っていた子たちに歯向かった、私たち数人は、今もいい友達。

 

高校生になったら、少人数のクラスメートで『いじめ』とは無縁。気の合うもの同士がつるんで、好きなことをした。音楽高校だったから、みんな個人主義の方が強かったかもしれない。グループで何かやるとしたら、それは学校全体のコーラスの時くらい。そこでパートリーダーになり、みんなをまとめなければならない立場になった。定期演奏会の前の早朝練習時、どうしてもアルトが低くなって、ソプラノがだんだん高くなっている傾向を伝えたかったのだが、それを大きな声でダメ出ししてた私をみて、「その言い方じゃダメだよ」と、ボソッと教えてくれた友達がいる。彼女はいつも冷静だったので、彼女に指適してもらえたことに感謝する。

 

その後も大学に入ってからも、新しい言語でいろいろな立場でいろいろな発言を求められ、言わなくてもいいことを言い、言わなければならないことを言わないで、その都度数え切れないほどの失敗をして、今に至る。

親しい仲にも礼儀ありとは良く言う。

一番油断してトラブルになるのは恋人同士や家族同士だから。

 

レッスン時も、同じ内容を伝えたくても、同じ方法では伝わらない。相手の立場に立って話さなければならないし、相手の立場で教材も選ばなければならない。上から目線で言ってもらう方がいいと言う大人もいれば、上から目線で言われるとムッとする子供もいる。教える方と教わる方の目線で求められる方向が違う。どうやっても、うまくいかないと思っていた矢先、急にしっくりハマることがある。お互いにバランスを見つけると言うか、、、。

 

そもそもこの『伝え方が9割』と言う本に出会ったきっかけは、自分のアピールの仕方を学ぶために買った。2011年の東日本大震災をきっかけに「チューリップインハーモニー 」と言うグループを結成した。復興支援の声が聞かれなくなったが、その後も震災チャリティーコンサートを継続して行きたいと思った。そのことに関心を持たなくなって行った人たちに、その動機と理由を伝える方法を見つけたかった。ざっくり言えばマーケティングの勉強のために買った本。私が何を一生懸命唱えようとも、「あなたのことを知らない」の一言で、関心を持ってもらえない。ロサンゼルスの同じ街に25年も住んでいるのに、自分のことを知ってもらうのがどんなに大変か、、、と言うことは新しい土地でローカルビジネスを立ち上げた人なら、みんな経験していることと思う。

 

ずっと同じ仲間と先祖代々、子供時代から築き上げる様な、日本の田舎社会では必要のない「自己アピール」。自己アピールをしたら、逆に煙たがれる様な社会だ。反対に噂が「架空の自己」までを勝手に作られてしまうから、本来の自分を自分自身が見つけにくい社会なのかもしれない。私もついこの間まで、その狭間に生きてきた気もする。割り切っている様で割り切れない、他人の求める自分と、自分の求める自分の違いが分からなくなる感じ。

 

履歴書で自分をアピールしたい時も、きっと就職先で書く内容は変わってくると思う。私の場合は音楽関連の自営業だから相手が何を求めて来るかで、何を差し出すかが変わる。長く生きると言うことは、経験値が上がると言うことだから、差し出せるものも増えると言うこと。できるだけ多くの経験を積んだ方がいい。

代わりに若い人たちは夢がある。できるだけ多くの夢を持って、それを実現するための経験値を増やせばいい。

 

自分の見せたいものを見せたい方法で伝えると言うのも、アートなどの個性を売りにする人はいいと思う。それがビジネスにつながるかどうかは別にして、発信の仕方や発信の場も重要になるかもしれないが、受け取りたい人が受け取るわけだし、気に入ってもらえば発信した甲斐もある。

発信しなければ自分一人のもの。発信すれば、みんなの物。

受け取り方はもちろん受け取る人の自由、でもこの方向で受け取って欲しくないと言う方向性がある場合は、発信側ができるだけそれを避けるように発信する努力をした方がいい。

 

伝わるか、伝わらないかは、伝え方でほとんど決まるから。